【別室】幼虫飼育を楽しむ −1−
お気に入り個体をペアリングさせ、その後の幼虫飼育が一番の楽しみです。期待している血統に限って上手く行かない、思い描いたとおりの個体が羽化してくることもそうそう有りませんし、小さいとか細いとかで落ち込んだり・・・。幼虫には責任がありませんから、やはり飼育者の血統管理と親虫選定そして飼育環境と管理の問題も・・・。しかしか何よりもまず楽しく幼虫飼育をしたいものですね。
下記の表は私が過去に経験した3令幼虫の最終ボトル交換時の体重から予想する成虫のサイズです。目安ですので表の通りにならないこともありますが、私のところでは菌床飼育においてほぼあてはまっています。 ♂で言えば26gで74o〜76o/28gで77o〜78oと予想出来ます。最終交換のタイミングで伸びたり縮んだりも考慮すれば、±2o程度の誤差は必ず出ますが概ね予想に近いサイズで羽化しています。恥ずかしながら未だ30gオーバーを達成していない私は、28g以上の幼虫に関してものを言える立場ではありませんが、一般的には80oを目指すには概ね30gが必要なようです。私のオリジナル血統をお譲りした中で、30gを達成し羽化サイズ80oと言う嬉しい報告も頂きました。しかし残念ながら羽化不全により表に出ることはありませんでした。
期待しているペアからの幼虫取りですが私流に簡単にご説明します。強制するものでもありませんし、これが正解というわけでもありません。私の実践していること、感じていることですので、その旨をご理解下さる方のみご覧下さい。
まず親虫の用意ですが、欲を言えば五体満足でなおかつ「お気に入りの形」、上翅を含めボディにディンプル(凹凸)のないものを選びたいです。実際には符節が欠落していても、少々の羽化不全でもペアリングに大きな問題ありませんが、余程の場合以外まず使いません。また、♀において大腮先端が欠けている個体はかなり無理(菌床産卵なら可)がありますし、♂においては後ろ足は勿論、符節が欠けているとペアリングはやや難しいと思います。(交尾の際、♂は必ず後ろ足で♀の背中〜下腹部をさするような行動をします)
羽化不全やディンプルは後天性の要因も勿論ありますが、遺伝的な部分でも出現し、ディンプルの多い個体が目立ったりと言う話を耳にします。
(1)自分の理想に近い個体であること。累代数のF値は問わず同血統または別血統で見た目に障害のない1ペアを用意。
(2)♂♀ともに極端に小さくなければ、(概ね♂65o♀38o以上は欲しいですね)サイズに見合う太さや各部のバランス重視で選定。
(3)個体差によりますが羽化してから6ヶ月程度、更に越冬個体が望ましい。(安全性と確実性から)

※(3)については、室温25℃前後で♂♀ともに羽化後2ヶ月程度でエサを食べ始め、羽化後3〜4ヶ月経過すればペアリング出来ます。
 小型の個体であれば成熟も早いため可能と思いますが、どうしても個体差があります。あまりに早いペアリングは危険なだけでなく、セット後に
 おいても個体により「産まない・無精卵・孵らない・腐敗」などの可能性が多々あるようです。早く次世代を見たいというのが人情ですが、ここ
 はじっと我慢でしっかりと成熟した越冬個体を使用することが望ましいと思います。
 また、夏場に30℃以上の高温を体験させてしまうと、その後加温しても産まないことがあります。強制的に冷蔵庫に入れるなどして疑似越冬
 させる猛者の方もおりますが、私の場合はそこまでして真冬に採卵したいとは考えていないため経験していません。
 しかしそれなりに効果はあると聞いております。尚、1度無精卵を産んだり、正常に産んでも腐敗してしまうような卵を産む♀は、何故か次回
 も同じような傾向になるとの事例もあります。3ヶ月でも半年でも越冬していなくても「成功するときは成功する」ことも付け加えておきます。
 一般的には親虫の選定(3)で記した条件でペアリングされている方が多いようで、無理をするよりも成功率は高いです。 
(1)ペアリングは基本的に春から初夏(4〜6月) です。温度管理出来れば一年中ペアリング出来ます。室温25℃以上が望ましい。
(2)十分エサを与え静かな暗い場所に。プラケースは出会いの機会を増やす意味で「小」で十分です。トラブル防止に♀の逃げ場を!
(3)予め♂をケースに入れておき、数日環境に慣らしてから♀を入れるのが一番安全。(あとは通常飼育と同じ方法で大丈夫です)
 
※(2)について♂♀が仲良くエサ皿の下に潜って・・・と言われますが、まさしくその通りです。揃って給餌している、それ以外ではエサ皿や足場用
 樹皮の下に隠れているようなら完了している可能性が高いと思います。概ね1週間程度同居でよいと思います。
 実際には1日か2日でペアリングは完了しているはずなのですが、温度や環境そしてペアの相性にもよります。国産オオクワガタは大人しいので
 滅多に♀に攻撃を加えることはありませんが、私は何度かトラブルを経験しています。逆に♀が♂を襲うことがあり、符節は勿論足の付け根から
 切り落としてしまうこともありました。必要以上の長期に渡る同居は注意が必要だと思います。
                                             (♂の体力も消耗しますので確実に寿命が短くなります)

(1)基本的に初夏(5〜7月) 迄にセット完了させます。中〜大ケースに産卵材(直径70o以上)を3本以上セットします。
  120oや180oの太いものでなくても十分です。親虫は産卵材の状態が幼虫の生育に適しているかを本能的に選ぶようです。
(2)産卵材は樹種よりも朽ち方が重要です。普通に販売している材ならほぼ問題ありません。殆どの場合クヌギやコナラの椎茸栽培の廃材が利
  用されています。樹皮は剥いても剥かなくても大きな問題はないと思っています。また安価なコナラ材等でもほとんど問題ありません。
(3)加水は2時間〜3時間、不要な水分を飛ばすのに約12時間程度陰干しをします。私の場合は大鍋で20分〜30分程度煮てしまい、アク
  抜きして皮を剥きます。冷めてから衣装ケースに発酵マットを敷き、更に幼虫の食べ残した菌床をほぐし、材を食べ残しマットで覆います。
  また、古い菌床ブロックをビニールごと(下と横面の一部は剥がしておきます)セットしたり、古いPPボトルを使用することもあります。
(4)産卵材では加水後に青カビが発生することがありますが、母虫が産卵行動に入ると消えることが多いです。ゼリーは多めに入れて1週間に1
  度チェックしますが、産卵に夢中になった♀はゼリーをほとんど食べません。

※(2)でカワラタケやヒラタケを植菌した材を使う場合もありますが、椎茸栽培の廃材より好んで産卵するようです。雑虫が気になりますが、天然
  のカワラ材が一番良い結果が出ています。桜・エノキ・コナラの天然材、クヌギと桜の生木から2年掛かりで自作したカワラ材にかなり産んでく
  れた経験がありますが、市販の産卵材でも十分に産卵してくれますので、現在は手間を掛けずに市販のもので普通にやっています。
  但し、良く乾燥していないものや高温処理されていないものには、希にコクワガタの幼虫や他の雑虫の卵や幼虫が入っていたりする事も考えら
  れ注意が必要です。手間と時間とお金を掛けてコクワの幼虫を育てていた・・・と言う経験もありました(^^;)  
  余談ですが、よく「グルタミン酸ナトリュウム」を使用して・・・と聞きますが、通常セット以上にカビの温床となる上に、そこまでしないでも順調に
  産卵しているので私は使用していません。
 

一般的な羽化サイズ予想表(菌床飼育)

終齢幼虫の体重(g) ♂サイズ(mm) ♀サイズ(mm)
8.0g前後 53以下 38以下
10.0g前後 54〜56 39〜41
12.0g前後 57〜59 42〜44
14.0g前後 60〜62 45〜47
16.0g前後 63〜65 48〜50
18.0g前後 66〜67 51〜52
20.0g前後 68〜70 53以上
22.0g前後 71〜73 .
24.0g前後 74以上 .
 
25gで75o前後が期待出来ます。※80oは30gUPが目安です。
 
個人的に1回目ボトル交換時に18g〜20gあれば十分と考えています。理由は、75o以上の大型を狙っていないことにあります。したがいまして、終齢での最終交換時に22g〜23gあれば満足致しております。日本産オオクワガタに於いて幼虫時25g以上で羽化個体75o以上の大型は、大腮及び頭幅が体についてこられない印象があります。中国産オオクワガタ・台湾オオクワガタのように大型でもバランスに優れた印象があるのは、中国産(hopei)では腹部の締まりが顕著に感じ、台湾オオクワガタ(formosanus)では、頭幅にしても内歯にしても日本産を凌駕する印象です。私の独断と偏見ですが、以上の理由から日本産は70o前後がバランスに優れ、一番格好良く見えるというものです。そして、外国産のように75oを超えてもバランスに優れる血統も存在することも聞きますが、やはり何処かに無理があると言う考えです。
親虫選別について考える
ペアリングについて考える
産卵木について考える
(1)セット後、約35〜45日でいよいよ割出です。材の囓り出しが遅い場合は更に10日前後遅らせます。卵は室温により異なりますが概ね15日
   〜25日で孵化します。50日で割る場合は既に加齢していることもあります。(初令で約20〜25日・2令で約30日を過ごします)
(2)材の外側からマイナスドライバー等で丁寧に剥がすように割ります。食痕が現れたら更に丁寧に。その際、けして「ひねり・ねじり」を加えない
  ことが重要です(ダメージを負う場合があります) 余談ですが、セット後に材が手で半分に割れるぐらいの状態に朽ちた材だと経験上、沢山
  取れることが多いです。
(3)卵が出てきてもほぼ7割〜8割は無事孵化することが多いです。そのまま埋め戻しても良いし、プリンカップ(菌床か発酵マット)に一時保管
  しても良いでしょう。その際は親虫の囓りカスや兄弟幼虫の食痕をほぐしてマット代わりにするのも有効です。
(4)堅い材の場合、割るときに自らの指などに怪我をしたり、幼虫を潰すおそれが多々あるので、良質の発酵マットに埋めて最低1〜2週間様
  子を見るのが安心です。

 ※産卵痕が無い、食痕が無い、途中で消えている、又は材から異臭がする、水分がしみ出る等の場合その材には産んでいないことが多いで
  す。材の状態が悪かったと言うことになります。材が子孫にとって好ましくないと判断された場合は産まないという結果になります。通常産卵行
  動に入った♀は、当然朽ちているものに産むのですが、下手をすれば腐朽したエサ皿やとんでもない細い材にすら産卵します。国産オオクワガ
  タはやや堅い材を好むと言われておりますが、経験上堅めの材ではなくても産む♀は柔らかい材に普通に産みます。菌床産卵も放置すれば
  ブロックがボロボロに崩されますが、我がブリードルームでは例外なく産んでいます。割り出しも楽で安全な上、即菌糸ビンに投入しても安心
  出来ます。(スポンジ状になった柔らかい材はやはり不向きです)尚、ペアリングが成功していない(♂♀共に成熟していない)場合は、産卵
  材の選び方/産卵セットの組み方以前の問題ですので、最初からやり直しとなります。希に繁殖能力のない個体も居るようです。
  同血統での累代飼育の弊害なのかその個体だけ何らかの理由で産卵しないのかは不明ですが、そのような特殊な例もあります。尚、産卵
  材に粘菌を中心とする雑菌が繁殖している場合、キノコの臭いと違った悪臭や異臭が出ますが、このような材で孵化した幼虫は菌床に投入
  して何日もしない内に落ちることがあります。菌糸に巻かれる・・・と耳にしますが、巻かれるのではなくそれ以前の問題が初令を衰弱させてい
  ると考えられます。弱った幼虫は菌床を摂取しないので成長もせずに落ちてしまうので、結果菌糸に吸収されてしまい頭部のみ残骸として残
  る結果になっています。生きたまま元気なうちに菌糸に吸収されることは無いと思います。
割り出しについて考える
先 頭
−次項へ続く−